ライデン フロスト。 ライデンフロスト効果

沸騰熱伝達の計算

ライデン フロスト

1 気体とは何か? 気体粒子は、「熱運動 thermal motion 」によって空間を激しく動き回っており、構成粒子間の距離が非常に大きいです。 そのため、気体のほとんどは空間であり、固体や液体に比べて、密度が非常に小さいです。 熱運動によって粒子が広がっていく現象は、「拡散 diffusion 」と呼ばれます。 気体粒子の熱運動の運動エネルギーと温度には、密接な関係があります。 例えば、気体状態の単原子分子の平均の運動エネルギーは、次の式で示されるように、絶対温度 T に比例します。 ここで、 k はボルツマン定数と呼ばれる定数で、 k = 1. この式は、気体粒子の平均の運動エネルギーが、気体の圧力や体積に関係なく、絶対温度 T だけに比例するということを示しています。 次の図. 1 に、気体分子の運動エネルギーと温度の関係を示しました。 このように、気体粒子が取り得るエネルギー準位による分布を示したグラフは、「マクスウェル・ボルツマン分布 Maxwell - Boltzmann distribution 」と呼ばれています。 この曲線の極大は、その運動エネルギーを持つ気体粒子の割合が、最も大きいことを示します。 ボルツマン分布より、温度が高いほど、大きな運動エネルギーを持つ気体粒子の割合が増加し、より速く気体粒子が動き回っていることが分かります。 1 窒素分子 N 2 の速さと温度の関係 気体のほとんどが空間であるのにも関わらず、ある体積を保つことができるのはなぜでしょうか?これは、気体粒子間の分子間力によって集合しようとする勢いに負けないだけの運動エネルギーを持って構成粒子が飛び回り、内壁に当たって押し返しているからです。 容器内の気体粒子は、内壁と衝突を繰り返し、内壁に圧力を及ぼしているのです。 2 気体粒子の衝突の様子 「空気は重さを持ち、圧力を及ぼしている」といえば、今では誰でも「当たり前ではないか」というでしょう。 しかし、これはわずか三百数十年前に誕生した、比較的新しい考えなのです。 それ以前の人たちは、「自然は真空を嫌う」という、古代ギリシアの大哲学者アリストテレスの説を後生大事に守って、大気圧によって生じる現象をすべてこの考えで説明しようとしていました。 17 世紀になると、科学で現象のもとになっている原因は何かという点に目を向け、その原因を実験によって明らかにしようとする態度が生まれてきました。 また、科学技術が発達してくると、実際にアリストテレスの説では、説明の付かない現象も数多く現れてきました。 揚水ポンプの現象が、その一例です。 この頃、金属の需要の増大によって、鉱山業が発達し、鉱坑は地下深くまで掘られるようになってきました。 そのため、深いところから水を汲み上げる必要が生じましたが、約 10 m 以上の深さになると、ポンプは働かなくなりました。 井戸掘職人からこの現象を聞いたイタリアの物理学者ガリレオ・ガリレイは、もし「自然が真空を嫌う」なら、水はいくらでも上がるはずであり、アリストテレスの説では、こうした現象を説明できないことに気付いたのです。 そこでガリレオは、「自然が真空を嫌う抵抗力」には、限度があるのではないかと考えたのです。 3 ガリレオ・ガリレイは、当時支持されていたアリストテレスの説に疑問を投げかけた 真空の問題は、ガリレオの弟子であった物理学者エヴァンジエリスタ・トリチェリーによって、新たな曲面を迎えました。 トリチェリーは、水 H 2 O の 13. 6 倍の密度を持つ水銀 Hg を用いて、その上がり得る高さを推測したのです。 実験の結果、ガラス管内の水銀 Hg は、約 760 mm の高さで止まり、管の上部に「空所」を生じました。 この空所こそ、今まで誰も見たことのない「真空」だと、トリチェリーは考えたのです。 さらに、トリチェリーの素晴らしいところは、水銀柱が宙に停止する原因を、初めて大気の重さに求めたところです。 4 トリチェリーの実験 大気圧下で、長さ 1 m 程度の筒に水銀 Hg を詰め、水銀 Hg を満たした皿の上で筒をひっくり返すと、筒の中の水銀 Hg は徐々に下がっていき、高さが 760 mm になったところで止まります。 これは、 760 mm の高さの水銀柱の圧力と、大気圧がつり合ったために起こる現象です。 筒の中の水銀 Hg は外に出ようにも、大気がそれを阻止しようと圧をかけているので、外に出られないのです。 このとき、筒内の上部はほぼ真空になるので、これを「トリチェリーの真空 Torricellian vacuum 」ということがあります。 大気圧を 760 mm 相当の水銀柱の重力による圧力とみなして、重力加速度を 9. これより、筒の断面積 S cm 2 によらず、 760 mm の水銀柱の圧力が、約 1. 現在、圧力の単位は SI 単位系である「 Pa 」を使うことが多いですが 、慣例として、大気圧を「 760 mmHg ミリメートル水銀柱 」と表すことも多い です。 「 mmHg 」は「 Torr トル 」と書くこともありますが、これはトリチェリーの名にちなんだものです。 1 気圧 = 101325 Pa = 760 mmHg = 760 Torr また、トリチェリーの行った実験では、水銀 Hg の代わりに別の液体を使うこともできますが、水銀 Hg が最も合理的な液体だと考えられています。 この理由は、水銀 Hg の密度が大きく、データの測定がしやすいという点と、水銀 Hg の蒸気圧が小さいために、蒸気圧を無視できるという点にあります。 例えば、水銀 Hg の代わりに水 H 2 O を使った場合は、水 H 2 O の密度は約 1. 6 = 10. 336 m にもなります。 実際に 10 m の筒を用意して、これを実験で行うのは、現実的ではありません。 また、水銀 Hg の蒸気圧を無視できることは、実験時の温度を考えなくても良い点で、実験が楽になります。 このような利点から、大気圧の測定には、水銀 Hg が好まれて使われるのです。 実はトリチェリーと同じ頃、日本にも空気の存在を明らかにした人がいました。 「たくあん漬」の考案者であるといわれる沢庵宗彭がその人です。 沢庵は、著書「東海夜話」の中で、「空気は目に見えないから存在しないように思うが実際にはあるのだ」と述べ、その証拠として、次のような例をあげています。 これは、その玉の間には空気が満ちているからだ」。 この「竹鉄砲」は、今では小学校 4 年の「空気でっぽう」という教材で取り上げられ、子どもたちは空気の伸び縮みを学習しています。 2 気体法則の歴史 i ボイルの法則 1662 年、イギリスの物理学者であったロバート・ボイルは、気体の圧力と体積について、 「同温で一定量の気体の体積はそれに働く圧力に反比例する」という法則を見出しました。 この関係を「ボイルの法則 Boyle's law 」といいます。 ボイルの法則は、気体の体積を V 、圧力を p とすると、次式で表されます。 5 ボイルの法則 ボイルの法則が成り立つのは、気体の体積と単位体積当たりの気体粒子数が、反比例の関係にあるからです。 したがって、器壁への気体粒子の衝突回数も単位時間当たりで 2 倍になり、気体の示す圧力も 2 倍となるのです。 なお、ボイルの法則は、十分に圧力が低い領域でしか成り立たない法則です。 ボイルの法則では、気体は温度一定で圧力を上げれば、いくらでも体積が小さくなることを示していますが、実際の気体では、ある程度の圧力を超えると凝縮あるいは昇華が起こって、液体や固体になってしまうからです。 ii シャルルの法則 気体の圧力が一定のとき、気体の温度が上昇すると、体積はどんどん大きくなっていきます。 絶対温度には、単位として 「 K ケルビン 」を 用います。 6 絶対温度とセルシウス温度の関係 T = t + 273 ここで T = t + 273 、 T 0 = 273 として、 1 式に 代入して式を変形すると、次のような 「同圧で一定量の気体の体積はその絶対温度に比例する」という関係が導き出せます。 この関係は、 1787 年にフランスの物理学者であったジャック・シャルルが見出したものであり、この法則を「シャルルの法則 Charles's law 」といいます。 これが、「絶対零度 absolute zero point 」への概念へとつながっていきました。 絶対零度は、すべての気体分子の熱運動がなくなった状態であり、熱力学的に考えられる最低温度です。 絶対零度は、絶対温度では 0 K で表され、セルシウス温度で表すと - 273. 1 K 程度までは、液体ヘリウム He による冷却で実現できますが、 0 K に到達することは技術的に難しいです。 7 シャルルの法則 また、実際の気体は温度を下げれば、絶対零度になる前に凝縮あるいは昇華が起こって、液体や固体になります。 液体窒素は、断熱膨張による空気の凝縮で容易に作ることができ、主に冷却材として用いられています。 液体窒素を使った面白い実験があります。 液体窒素に手を突っ込むというものです。 しかし、実際には手を数秒入れただけでは、手に何の傷害も残しません。 これは、「ライデンフロスト効果 Leidenfrost effect 」と呼ばれる現象が関係しています。 8 液体窒素に手を突っ込んでも凍傷を起こさない ライデンフロスト効果は、身近なところでも観察することができます。 例えば、高温に熱したフライパンに水滴を垂らすと、水滴は瞬時に蒸発することはなく、水滴はフライパンの上をコロコロと転がるように横滑りします。 これは、液体がその沸点よりもはるかに高温に熱された固体に触れると、蒸気気体の被膜が液体と固体の間に生じて、液体が固体に直接接することを妨げて、熱伝導を遅らせるためです。 そして、実はこれと同じような現象が、液体窒素と手の間にも起こっているのです。 液体窒素に手を突っ込んだ瞬間、生じた気体窒素の被膜が皮膚表面に生じて熱伝導を遅らせるため、凍傷には至らないのです。 ただし、ライデンフロスト効果は熱伝導を遅らせるだけなので、手を突っ込むのは 1 〜 2 秒に留めておいた方がいいと思います。 iii アボガドロの法則 1808 年、フランスの化学者であるジョセフ・ゲーリュサックは、「各種気体間の反応において、気体の体積の間には簡単な整数比が成り立つ」という「気体反応の法則 law of combining volumes 」を発表しました。 しかし、この法則は、当時の化学者にはあまり受け入れられませんでした。 これを説明するために、イタリアの化学者であるアメデオ・アボガドロは、 「同温同圧のもとで、一定体積中に含まれる気体粒子の物質量は等しい」という関係を見出しました。 この関係を「アボガドロの法則 Avogadro's law 」といいます。 ア ボガドロの法則は、気体の体積を V 、気体粒子の物質量を n とすると、次のように表されます。 iv 理想気体の状態方程式 これより、 i ボイルの法則・ ii シャルルの法則・ iii アボガドロの法則を、 1 つの法則としてまとめてみましょう。 今、 P, V, T, n で表される点 O と、 P 3 , V 3 , T 3 , n 3 で表される点 III の関係を導いてみます。 これらをまとめると、次のように表せます。 まず、式 2 と式 3 の それぞれを体積 V 1 の式に変形して、体積 V 1 を消去すると、式 5 が得られます。 そして、 T = T 1 , P 1 = P 2 の関係があるので、式 5 は式 6 で示されるような 「一定量の気体の体積は圧力に反比例し、絶対温度に比例する」 という関係の式に変形することができます。 この式は、一般的に「ボイル・シャルルの法則 combined gas law 」と呼ばれています。 さらに、 式 4 と式 6 の それぞれを体積 V 2 の式に変形して、体積 V 2 を消去すると、式 7 が得られます。 そして、 n 2 = n, T 2 = T 3 の関係があるので、式 7 は式 8 のように変形することができます。 この式は、ボイルの法則・シャルルの法則・アボガドロの法則をまとめ上げた式であり、どのような気体に関しても、 の値が常に一定になることを表しています。 この定数 k を定数 R とすると、 PV = nRT という「理想気体の状態方程式 ideal gas law 」が導かれます。 理想気体の状態方程式 PV = nRT を利用することで、気体の密度から分子量を決定することができます。 例として、質量 w g で分子量 M の気体に理想気体の状態方程式 PV = nRT を使ってみましょう。 まず、物質量は のように表すことができる ので、 理想気体の状態方程式 PV = nRT は、式 9 のように変形することができます。 式 10 を用いることで、気体の分子量を求めることができるのです。 ただし、理想気体の状態方程式 PV = nRT は、 1 つの気体の情報であることに注意しましょう。 圧力 P を変えたり、体積 V を変えたり、温度 T を変えたり、物質量 n を変えたり・・・・・・というような状態の変化がある場合には、ボイルの法則・シャルルの法則・アボガドロの法則を使う必要があります。 しかし、これらの諸法則も、すべて理想気体の状態方程式 PV = nRT に含まれているのだから、物質量 n が一定の場合は、ボイル・シャルルの法則を使えば、どのような問題にも対応できます。 ボイル・シャルルの法則において、左辺に変化前の気体の情報、右辺に変化後の気体の情報を書いて計算すれば、状態の変化がある気体の量 圧力・体積・温度 が分かります。 また、気体定数 R は、使用する圧力や体積の単位によって数値が変化します。 高校化学では、圧力の単位として〔 Pa 〕、体積の単位として〔 L 〕を使うことが多いですが、高校物理では、圧力の単位として〔 Pa 〕、体積の単位として〔 m 3 〕を使うことが多いです。 圧力 Pa 、体積 L の場合 ・・・ R = 8. 気体の標準状態 273 K, 1. また、 気体定数 R は、アボガドロ定数 N A = 6. つまり、ボルツマン定数 k は、分子1個当たりの気体定数を表す量ということになります。 3 混合気体 互いに反応しない 2 種類以上の気体を 1 つの容器に充填すると、各気体の成分は拡散の原理により、高濃度の領域から低濃度の領域に移動し、均一な気体となります。 このように 2 種類以上の気体を含んでいる気体を「混合気体 mixed gas 」といいます。 また、混合気体中のそれぞれの気体を「成分気体 component gas 」といいます。 混合気体を扱うときに必ず問題となるのが、各成分気体がどのような比率で含まれているのかということです。 これらの比率を考えるときは、混合気体を分離して、 1 つの成分気体について、仮想的な状態を設定してやらなくてはなりません。 混合気体を分離するとき、その方法には、圧力 P と温度 T を一定にして分離する方法と、体積 V と温度 T を一定にして分離する方法の 2 種類があります。 i 体積と温度が一定のとき 気体 A と気体 B の混合気体について、体積 V と温度 T を一定のまま、圧力を変えて仮想的に分離した状態を考えます。 なお、混合気体の圧力を「全圧 total pressure 」といい、各成分気体が単独で混合気体の全体積 V を占めるときの圧力を「分圧 partial pressure 」といいます。 混合気体の圧力を P 全 、気体 A の圧力を P A 、気体 B の圧力を P B とすると、次のようになります。 9 圧力を変えて混合気体を分離する 式 11 , 式 12 , 式 13 より、 n A と n B を消去すると、次のような式 14 が得られます。 この 式 14 を 「ドルトンの分圧の法則 Dalton's law 」といいます。 混合気体の全圧 P 全 は、各成分気体の分圧 P A と P B の和に等しくなるのです。 また、分圧 P A と P B は、全圧 P 全 とその成分気体のモル分率の積で表されます。 これは、分圧の比が各成分気体の物質量の比に等しいことを示しています。 また、同温同圧では気体の物質量は体積に比例するので、分圧の比は混合前の各成分気体の体積比にも等しいです。 気体を水上置換で捕集すると、捕集された気体は水蒸気との混合気体になります。 したがって、捕集気体の分圧は、捕集気体の全圧から水蒸気の分圧を引いた値です。 なお、このときの混合気体の全圧は、大気圧と等しいです。 つまり、捕集気体の分圧は、大気圧から水蒸気圧を引いた値と等しくなります。 10 水上置換では見かけの捕集気体の圧力は水蒸気圧の分だけ大きくなっている ii 圧力と温度が一定のとき アボガドロの法則によると、一定温度 T と一定圧力 P で、気体の体積 V は気体粒子の数に比例します。 この法則は、混合気体でも同じように成り立ちます。 まず、気体 A と気体 B の混合気体について、圧力 P と温度 T を一定のまま、体積を変えて仮想的に分離した状態を考えます。 なお、混合気体の体積を「全体積 total volume 」といい、各成分気体が単独で混合気体の全圧 P を示すときの体積を「分体積 partial volume 」といいます。 混合気体の体積を V 全 、気体 A の体積を V A 、気体 B の体積を V B とすると、次のようになります。 11 体積を変えて混合気体を分離する 式 15 , 式 16 , 式 17 より、 n A と n B を消去すると、次のような式 18 が得られます。 混合気体の全体積 V 全 は、各成分気体の分体積 V A と V B の和に等しくなるのです。 また、分体積 V A と V B は、全体積 V 全 とその成分気体のモル分率の積で表されます。 これは、分体積の比が、各成分気体の物質量の比に等しいことを示しています。 iii 混合気体のまとめ 気体 A と気体 B の混合気体の全圧を P 全 、全体積を V 全 、物質量の和を n 全 としたとき、理想気体の状態方程式より が成立します。 また、各成分気体の分圧を P A と P B 、分体積を V A と V B とすると、次の表. 1 のような関係が成り立ちます。 1 分圧と分体積の関係 分圧の状態方程式 分体積の状態方程式 気体 A の状態方程式 気体 B の状態方程式 表. 1 の関係において、十分に注意しなければならないことは、分圧というのは、飽くまで V と T を一定にして分離したときの成分気体の圧力であり、分体積もまた、 P と T を一定にして分離したときの成分気体の体積であることです。 よくある間違いとして、分圧の状態方程式を作るときに、体積としてその成分の分体積を使ってしまうことがあるのです。 つまり、 や などの式は、化学的に間違った式ということになります。 1 つの成分気体が与えられたとき、その成分の物質量 n で決めることができるのは、 P か V のどちらか一方であることに注意しましょう。 4 理想気体と実在気体の違い 気体の本質は、「ほとんどが空間であること」と「ほとんど自由な粒子の運動であること」の 2 点に集約されます。 つまり、完全に空間かつ完全に自由な粒子の運動を持つ気体は、気体としての本質を完璧に備えたものになります。 ただし、実在する気体の粒子は、それ自身の体積を持ち、また気体粒子間の分子間力は決して消えはしないのだから、そのような理想的な気体は、観念上でしか存在しません。 このように、分子間力が働かず、分子自身の大きさもゼロという理想化された気体を「理想気体 ideal gas 」といいます。 これに対して、実在する気体は「実在気体 real gas 」といいます。 実在気体では、分子間力が働いており、分子自身の大きさもゼロではありません。 2 理想気体と実在気体 分子自身の大きさ 分子間力 理想気体の状態方程式 理想気体 大きさはゼロ 分子間力はゼロ 厳密に成立する 実在気体 大きさがある 分子間力がある 厳密には成立しない 理想気体と実在気体とを比較すると、 i 分子自身の大きさの効果 と ii 分子間力の効果 により、その振る舞いに差異が見られることになります。 i 分子自身の大きさの効果 同温同圧下で、理想気体と実在気体とを比較すると、分子自身の大きさの効果により、実在気体の方が気体の占める体積が大きくなります。 しかし、低圧にして全体積を大きくしてやると、分子自身の大きさの効果は相対的に小さくなります。 つまり、高圧では分子自身の大きさの効果が顕著になり、低圧では分子自身の大きさの効果は弱まります。 分子間力の効果により、実在気体の方が理想気体よりも体積が小さくなる iii 実在気体を理想気体に近付ける つまり、低圧にすれば、「分子自身の大きさ」 と「 分子間力」の 2 つの効果が打ち消しあって消えていくのだから、たいていの気体は低圧にするだけで理想気体に近づきます。 さらに、気体を高温にすると、気体粒子の熱運動が激しくなって、粒子間に働く分子間力が、気体の体積や圧に与える影響が相対的に消えていきます。 つまり、高温低圧にすれば、実在気体を理想気体に近づけることができます。 また、理想気体と実在気体の違いを論ずるとき、 次の図. 12 の ようなグラフを用いることが多いです。 しかし、気体の圧力を上げていくと、理想気体と実在気体とのずれが徐々に大きくなっていきます。 圧力を上げても、比較的理想気体に近い振る舞いをする実在気体としては、水素 H 2 やヘリウム He のような分子量の小さい無極性分子があげられます。 これは、分子量が小さいほど、分子自身の大きさや分子間力が小さくなるからです。 さらに、無極性分子は極性分子よりも分子間力が小さくなるので、無極性分子の方が理想気体に近くなります。 低分子量の無極性分子は、理想気体に近い振る舞いをする 一方で、二酸化炭素 CO 2 のように分子量が大きい分子や、塩化水素 HCl のように極性のある分子では、圧力を上げていくと、理想気体とのずれが顕著になります。 このように曲線が V 字型になる理由は、圧力の変化により、分子自身の大きさの効果と分子間力の効果の寄与が変わるからです。

次の

ライデンフロスト効果とは

ライデン フロスト

1 気体とは何か? 気体粒子は、「熱運動 thermal motion 」によって空間を激しく動き回っており、構成粒子間の距離が非常に大きいです。 そのため、気体のほとんどは空間であり、固体や液体に比べて、密度が非常に小さいです。 熱運動によって粒子が広がっていく現象は、「拡散 diffusion 」と呼ばれます。 気体粒子の熱運動の運動エネルギーと温度には、密接な関係があります。 例えば、気体状態の単原子分子の平均の運動エネルギーは、次の式で示されるように、絶対温度 T に比例します。 ここで、 k はボルツマン定数と呼ばれる定数で、 k = 1. この式は、気体粒子の平均の運動エネルギーが、気体の圧力や体積に関係なく、絶対温度 T だけに比例するということを示しています。 次の図. 1 に、気体分子の運動エネルギーと温度の関係を示しました。 このように、気体粒子が取り得るエネルギー準位による分布を示したグラフは、「マクスウェル・ボルツマン分布 Maxwell - Boltzmann distribution 」と呼ばれています。 この曲線の極大は、その運動エネルギーを持つ気体粒子の割合が、最も大きいことを示します。 ボルツマン分布より、温度が高いほど、大きな運動エネルギーを持つ気体粒子の割合が増加し、より速く気体粒子が動き回っていることが分かります。 1 窒素分子 N 2 の速さと温度の関係 気体のほとんどが空間であるのにも関わらず、ある体積を保つことができるのはなぜでしょうか?これは、気体粒子間の分子間力によって集合しようとする勢いに負けないだけの運動エネルギーを持って構成粒子が飛び回り、内壁に当たって押し返しているからです。 容器内の気体粒子は、内壁と衝突を繰り返し、内壁に圧力を及ぼしているのです。 2 気体粒子の衝突の様子 「空気は重さを持ち、圧力を及ぼしている」といえば、今では誰でも「当たり前ではないか」というでしょう。 しかし、これはわずか三百数十年前に誕生した、比較的新しい考えなのです。 それ以前の人たちは、「自然は真空を嫌う」という、古代ギリシアの大哲学者アリストテレスの説を後生大事に守って、大気圧によって生じる現象をすべてこの考えで説明しようとしていました。 17 世紀になると、科学で現象のもとになっている原因は何かという点に目を向け、その原因を実験によって明らかにしようとする態度が生まれてきました。 また、科学技術が発達してくると、実際にアリストテレスの説では、説明の付かない現象も数多く現れてきました。 揚水ポンプの現象が、その一例です。 この頃、金属の需要の増大によって、鉱山業が発達し、鉱坑は地下深くまで掘られるようになってきました。 そのため、深いところから水を汲み上げる必要が生じましたが、約 10 m 以上の深さになると、ポンプは働かなくなりました。 井戸掘職人からこの現象を聞いたイタリアの物理学者ガリレオ・ガリレイは、もし「自然が真空を嫌う」なら、水はいくらでも上がるはずであり、アリストテレスの説では、こうした現象を説明できないことに気付いたのです。 そこでガリレオは、「自然が真空を嫌う抵抗力」には、限度があるのではないかと考えたのです。 3 ガリレオ・ガリレイは、当時支持されていたアリストテレスの説に疑問を投げかけた 真空の問題は、ガリレオの弟子であった物理学者エヴァンジエリスタ・トリチェリーによって、新たな曲面を迎えました。 トリチェリーは、水 H 2 O の 13. 6 倍の密度を持つ水銀 Hg を用いて、その上がり得る高さを推測したのです。 実験の結果、ガラス管内の水銀 Hg は、約 760 mm の高さで止まり、管の上部に「空所」を生じました。 この空所こそ、今まで誰も見たことのない「真空」だと、トリチェリーは考えたのです。 さらに、トリチェリーの素晴らしいところは、水銀柱が宙に停止する原因を、初めて大気の重さに求めたところです。 4 トリチェリーの実験 大気圧下で、長さ 1 m 程度の筒に水銀 Hg を詰め、水銀 Hg を満たした皿の上で筒をひっくり返すと、筒の中の水銀 Hg は徐々に下がっていき、高さが 760 mm になったところで止まります。 これは、 760 mm の高さの水銀柱の圧力と、大気圧がつり合ったために起こる現象です。 筒の中の水銀 Hg は外に出ようにも、大気がそれを阻止しようと圧をかけているので、外に出られないのです。 このとき、筒内の上部はほぼ真空になるので、これを「トリチェリーの真空 Torricellian vacuum 」ということがあります。 大気圧を 760 mm 相当の水銀柱の重力による圧力とみなして、重力加速度を 9. これより、筒の断面積 S cm 2 によらず、 760 mm の水銀柱の圧力が、約 1. 現在、圧力の単位は SI 単位系である「 Pa 」を使うことが多いですが 、慣例として、大気圧を「 760 mmHg ミリメートル水銀柱 」と表すことも多い です。 「 mmHg 」は「 Torr トル 」と書くこともありますが、これはトリチェリーの名にちなんだものです。 1 気圧 = 101325 Pa = 760 mmHg = 760 Torr また、トリチェリーの行った実験では、水銀 Hg の代わりに別の液体を使うこともできますが、水銀 Hg が最も合理的な液体だと考えられています。 この理由は、水銀 Hg の密度が大きく、データの測定がしやすいという点と、水銀 Hg の蒸気圧が小さいために、蒸気圧を無視できるという点にあります。 例えば、水銀 Hg の代わりに水 H 2 O を使った場合は、水 H 2 O の密度は約 1. 6 = 10. 336 m にもなります。 実際に 10 m の筒を用意して、これを実験で行うのは、現実的ではありません。 また、水銀 Hg の蒸気圧を無視できることは、実験時の温度を考えなくても良い点で、実験が楽になります。 このような利点から、大気圧の測定には、水銀 Hg が好まれて使われるのです。 実はトリチェリーと同じ頃、日本にも空気の存在を明らかにした人がいました。 「たくあん漬」の考案者であるといわれる沢庵宗彭がその人です。 沢庵は、著書「東海夜話」の中で、「空気は目に見えないから存在しないように思うが実際にはあるのだ」と述べ、その証拠として、次のような例をあげています。 これは、その玉の間には空気が満ちているからだ」。 この「竹鉄砲」は、今では小学校 4 年の「空気でっぽう」という教材で取り上げられ、子どもたちは空気の伸び縮みを学習しています。 2 気体法則の歴史 i ボイルの法則 1662 年、イギリスの物理学者であったロバート・ボイルは、気体の圧力と体積について、 「同温で一定量の気体の体積はそれに働く圧力に反比例する」という法則を見出しました。 この関係を「ボイルの法則 Boyle's law 」といいます。 ボイルの法則は、気体の体積を V 、圧力を p とすると、次式で表されます。 5 ボイルの法則 ボイルの法則が成り立つのは、気体の体積と単位体積当たりの気体粒子数が、反比例の関係にあるからです。 したがって、器壁への気体粒子の衝突回数も単位時間当たりで 2 倍になり、気体の示す圧力も 2 倍となるのです。 なお、ボイルの法則は、十分に圧力が低い領域でしか成り立たない法則です。 ボイルの法則では、気体は温度一定で圧力を上げれば、いくらでも体積が小さくなることを示していますが、実際の気体では、ある程度の圧力を超えると凝縮あるいは昇華が起こって、液体や固体になってしまうからです。 ii シャルルの法則 気体の圧力が一定のとき、気体の温度が上昇すると、体積はどんどん大きくなっていきます。 絶対温度には、単位として 「 K ケルビン 」を 用います。 6 絶対温度とセルシウス温度の関係 T = t + 273 ここで T = t + 273 、 T 0 = 273 として、 1 式に 代入して式を変形すると、次のような 「同圧で一定量の気体の体積はその絶対温度に比例する」という関係が導き出せます。 この関係は、 1787 年にフランスの物理学者であったジャック・シャルルが見出したものであり、この法則を「シャルルの法則 Charles's law 」といいます。 これが、「絶対零度 absolute zero point 」への概念へとつながっていきました。 絶対零度は、すべての気体分子の熱運動がなくなった状態であり、熱力学的に考えられる最低温度です。 絶対零度は、絶対温度では 0 K で表され、セルシウス温度で表すと - 273. 1 K 程度までは、液体ヘリウム He による冷却で実現できますが、 0 K に到達することは技術的に難しいです。 7 シャルルの法則 また、実際の気体は温度を下げれば、絶対零度になる前に凝縮あるいは昇華が起こって、液体や固体になります。 液体窒素は、断熱膨張による空気の凝縮で容易に作ることができ、主に冷却材として用いられています。 液体窒素を使った面白い実験があります。 液体窒素に手を突っ込むというものです。 しかし、実際には手を数秒入れただけでは、手に何の傷害も残しません。 これは、「ライデンフロスト効果 Leidenfrost effect 」と呼ばれる現象が関係しています。 8 液体窒素に手を突っ込んでも凍傷を起こさない ライデンフロスト効果は、身近なところでも観察することができます。 例えば、高温に熱したフライパンに水滴を垂らすと、水滴は瞬時に蒸発することはなく、水滴はフライパンの上をコロコロと転がるように横滑りします。 これは、液体がその沸点よりもはるかに高温に熱された固体に触れると、蒸気気体の被膜が液体と固体の間に生じて、液体が固体に直接接することを妨げて、熱伝導を遅らせるためです。 そして、実はこれと同じような現象が、液体窒素と手の間にも起こっているのです。 液体窒素に手を突っ込んだ瞬間、生じた気体窒素の被膜が皮膚表面に生じて熱伝導を遅らせるため、凍傷には至らないのです。 ただし、ライデンフロスト効果は熱伝導を遅らせるだけなので、手を突っ込むのは 1 〜 2 秒に留めておいた方がいいと思います。 iii アボガドロの法則 1808 年、フランスの化学者であるジョセフ・ゲーリュサックは、「各種気体間の反応において、気体の体積の間には簡単な整数比が成り立つ」という「気体反応の法則 law of combining volumes 」を発表しました。 しかし、この法則は、当時の化学者にはあまり受け入れられませんでした。 これを説明するために、イタリアの化学者であるアメデオ・アボガドロは、 「同温同圧のもとで、一定体積中に含まれる気体粒子の物質量は等しい」という関係を見出しました。 この関係を「アボガドロの法則 Avogadro's law 」といいます。 ア ボガドロの法則は、気体の体積を V 、気体粒子の物質量を n とすると、次のように表されます。 iv 理想気体の状態方程式 これより、 i ボイルの法則・ ii シャルルの法則・ iii アボガドロの法則を、 1 つの法則としてまとめてみましょう。 今、 P, V, T, n で表される点 O と、 P 3 , V 3 , T 3 , n 3 で表される点 III の関係を導いてみます。 これらをまとめると、次のように表せます。 まず、式 2 と式 3 の それぞれを体積 V 1 の式に変形して、体積 V 1 を消去すると、式 5 が得られます。 そして、 T = T 1 , P 1 = P 2 の関係があるので、式 5 は式 6 で示されるような 「一定量の気体の体積は圧力に反比例し、絶対温度に比例する」 という関係の式に変形することができます。 この式は、一般的に「ボイル・シャルルの法則 combined gas law 」と呼ばれています。 さらに、 式 4 と式 6 の それぞれを体積 V 2 の式に変形して、体積 V 2 を消去すると、式 7 が得られます。 そして、 n 2 = n, T 2 = T 3 の関係があるので、式 7 は式 8 のように変形することができます。 この式は、ボイルの法則・シャルルの法則・アボガドロの法則をまとめ上げた式であり、どのような気体に関しても、 の値が常に一定になることを表しています。 この定数 k を定数 R とすると、 PV = nRT という「理想気体の状態方程式 ideal gas law 」が導かれます。 理想気体の状態方程式 PV = nRT を利用することで、気体の密度から分子量を決定することができます。 例として、質量 w g で分子量 M の気体に理想気体の状態方程式 PV = nRT を使ってみましょう。 まず、物質量は のように表すことができる ので、 理想気体の状態方程式 PV = nRT は、式 9 のように変形することができます。 式 10 を用いることで、気体の分子量を求めることができるのです。 ただし、理想気体の状態方程式 PV = nRT は、 1 つの気体の情報であることに注意しましょう。 圧力 P を変えたり、体積 V を変えたり、温度 T を変えたり、物質量 n を変えたり・・・・・・というような状態の変化がある場合には、ボイルの法則・シャルルの法則・アボガドロの法則を使う必要があります。 しかし、これらの諸法則も、すべて理想気体の状態方程式 PV = nRT に含まれているのだから、物質量 n が一定の場合は、ボイル・シャルルの法則を使えば、どのような問題にも対応できます。 ボイル・シャルルの法則において、左辺に変化前の気体の情報、右辺に変化後の気体の情報を書いて計算すれば、状態の変化がある気体の量 圧力・体積・温度 が分かります。 また、気体定数 R は、使用する圧力や体積の単位によって数値が変化します。 高校化学では、圧力の単位として〔 Pa 〕、体積の単位として〔 L 〕を使うことが多いですが、高校物理では、圧力の単位として〔 Pa 〕、体積の単位として〔 m 3 〕を使うことが多いです。 圧力 Pa 、体積 L の場合 ・・・ R = 8. 気体の標準状態 273 K, 1. また、 気体定数 R は、アボガドロ定数 N A = 6. つまり、ボルツマン定数 k は、分子1個当たりの気体定数を表す量ということになります。 3 混合気体 互いに反応しない 2 種類以上の気体を 1 つの容器に充填すると、各気体の成分は拡散の原理により、高濃度の領域から低濃度の領域に移動し、均一な気体となります。 このように 2 種類以上の気体を含んでいる気体を「混合気体 mixed gas 」といいます。 また、混合気体中のそれぞれの気体を「成分気体 component gas 」といいます。 混合気体を扱うときに必ず問題となるのが、各成分気体がどのような比率で含まれているのかということです。 これらの比率を考えるときは、混合気体を分離して、 1 つの成分気体について、仮想的な状態を設定してやらなくてはなりません。 混合気体を分離するとき、その方法には、圧力 P と温度 T を一定にして分離する方法と、体積 V と温度 T を一定にして分離する方法の 2 種類があります。 i 体積と温度が一定のとき 気体 A と気体 B の混合気体について、体積 V と温度 T を一定のまま、圧力を変えて仮想的に分離した状態を考えます。 なお、混合気体の圧力を「全圧 total pressure 」といい、各成分気体が単独で混合気体の全体積 V を占めるときの圧力を「分圧 partial pressure 」といいます。 混合気体の圧力を P 全 、気体 A の圧力を P A 、気体 B の圧力を P B とすると、次のようになります。 9 圧力を変えて混合気体を分離する 式 11 , 式 12 , 式 13 より、 n A と n B を消去すると、次のような式 14 が得られます。 この 式 14 を 「ドルトンの分圧の法則 Dalton's law 」といいます。 混合気体の全圧 P 全 は、各成分気体の分圧 P A と P B の和に等しくなるのです。 また、分圧 P A と P B は、全圧 P 全 とその成分気体のモル分率の積で表されます。 これは、分圧の比が各成分気体の物質量の比に等しいことを示しています。 また、同温同圧では気体の物質量は体積に比例するので、分圧の比は混合前の各成分気体の体積比にも等しいです。 気体を水上置換で捕集すると、捕集された気体は水蒸気との混合気体になります。 したがって、捕集気体の分圧は、捕集気体の全圧から水蒸気の分圧を引いた値です。 なお、このときの混合気体の全圧は、大気圧と等しいです。 つまり、捕集気体の分圧は、大気圧から水蒸気圧を引いた値と等しくなります。 10 水上置換では見かけの捕集気体の圧力は水蒸気圧の分だけ大きくなっている ii 圧力と温度が一定のとき アボガドロの法則によると、一定温度 T と一定圧力 P で、気体の体積 V は気体粒子の数に比例します。 この法則は、混合気体でも同じように成り立ちます。 まず、気体 A と気体 B の混合気体について、圧力 P と温度 T を一定のまま、体積を変えて仮想的に分離した状態を考えます。 なお、混合気体の体積を「全体積 total volume 」といい、各成分気体が単独で混合気体の全圧 P を示すときの体積を「分体積 partial volume 」といいます。 混合気体の体積を V 全 、気体 A の体積を V A 、気体 B の体積を V B とすると、次のようになります。 11 体積を変えて混合気体を分離する 式 15 , 式 16 , 式 17 より、 n A と n B を消去すると、次のような式 18 が得られます。 混合気体の全体積 V 全 は、各成分気体の分体積 V A と V B の和に等しくなるのです。 また、分体積 V A と V B は、全体積 V 全 とその成分気体のモル分率の積で表されます。 これは、分体積の比が、各成分気体の物質量の比に等しいことを示しています。 iii 混合気体のまとめ 気体 A と気体 B の混合気体の全圧を P 全 、全体積を V 全 、物質量の和を n 全 としたとき、理想気体の状態方程式より が成立します。 また、各成分気体の分圧を P A と P B 、分体積を V A と V B とすると、次の表. 1 のような関係が成り立ちます。 1 分圧と分体積の関係 分圧の状態方程式 分体積の状態方程式 気体 A の状態方程式 気体 B の状態方程式 表. 1 の関係において、十分に注意しなければならないことは、分圧というのは、飽くまで V と T を一定にして分離したときの成分気体の圧力であり、分体積もまた、 P と T を一定にして分離したときの成分気体の体積であることです。 よくある間違いとして、分圧の状態方程式を作るときに、体積としてその成分の分体積を使ってしまうことがあるのです。 つまり、 や などの式は、化学的に間違った式ということになります。 1 つの成分気体が与えられたとき、その成分の物質量 n で決めることができるのは、 P か V のどちらか一方であることに注意しましょう。 4 理想気体と実在気体の違い 気体の本質は、「ほとんどが空間であること」と「ほとんど自由な粒子の運動であること」の 2 点に集約されます。 つまり、完全に空間かつ完全に自由な粒子の運動を持つ気体は、気体としての本質を完璧に備えたものになります。 ただし、実在する気体の粒子は、それ自身の体積を持ち、また気体粒子間の分子間力は決して消えはしないのだから、そのような理想的な気体は、観念上でしか存在しません。 このように、分子間力が働かず、分子自身の大きさもゼロという理想化された気体を「理想気体 ideal gas 」といいます。 これに対して、実在する気体は「実在気体 real gas 」といいます。 実在気体では、分子間力が働いており、分子自身の大きさもゼロではありません。 2 理想気体と実在気体 分子自身の大きさ 分子間力 理想気体の状態方程式 理想気体 大きさはゼロ 分子間力はゼロ 厳密に成立する 実在気体 大きさがある 分子間力がある 厳密には成立しない 理想気体と実在気体とを比較すると、 i 分子自身の大きさの効果 と ii 分子間力の効果 により、その振る舞いに差異が見られることになります。 i 分子自身の大きさの効果 同温同圧下で、理想気体と実在気体とを比較すると、分子自身の大きさの効果により、実在気体の方が気体の占める体積が大きくなります。 しかし、低圧にして全体積を大きくしてやると、分子自身の大きさの効果は相対的に小さくなります。 つまり、高圧では分子自身の大きさの効果が顕著になり、低圧では分子自身の大きさの効果は弱まります。 分子間力の効果により、実在気体の方が理想気体よりも体積が小さくなる iii 実在気体を理想気体に近付ける つまり、低圧にすれば、「分子自身の大きさ」 と「 分子間力」の 2 つの効果が打ち消しあって消えていくのだから、たいていの気体は低圧にするだけで理想気体に近づきます。 さらに、気体を高温にすると、気体粒子の熱運動が激しくなって、粒子間に働く分子間力が、気体の体積や圧に与える影響が相対的に消えていきます。 つまり、高温低圧にすれば、実在気体を理想気体に近づけることができます。 また、理想気体と実在気体の違いを論ずるとき、 次の図. 12 の ようなグラフを用いることが多いです。 しかし、気体の圧力を上げていくと、理想気体と実在気体とのずれが徐々に大きくなっていきます。 圧力を上げても、比較的理想気体に近い振る舞いをする実在気体としては、水素 H 2 やヘリウム He のような分子量の小さい無極性分子があげられます。 これは、分子量が小さいほど、分子自身の大きさや分子間力が小さくなるからです。 さらに、無極性分子は極性分子よりも分子間力が小さくなるので、無極性分子の方が理想気体に近くなります。 低分子量の無極性分子は、理想気体に近い振る舞いをする 一方で、二酸化炭素 CO 2 のように分子量が大きい分子や、塩化水素 HCl のように極性のある分子では、圧力を上げていくと、理想気体とのずれが顕著になります。 このように曲線が V 字型になる理由は、圧力の変化により、分子自身の大きさの効果と分子間力の効果の寄与が変わるからです。

次の

【アルドノア・ゼロ 第4話】ライデンフロスト現象ってなに?おしえて!偉い人!

ライデン フロスト

次世代パワー半導体と呼ばれるワイドバンドギャップ半導体は、より省エネな電力変換素子の材料として注目されています。 そのワイドバンドギャップ半導体は高耐圧・大電流用途のSiCや高周波用途のGaNがありますが、これらの材料は研究段階から社会実装段階に入っています。 その次の研究対象として、Ga 2O 3 酸化ガリウム)が注目されています。 通常GaNはノーマリーオン型と呼ばれるデバイスですが、パワーデバイスではノーマリーオン動作は故障時の安全性が担保できないため、対策が必須となっています。 この分極を制御することで原理的にノーマリーオフ動作を行うことが可能となり、パワーデバイスの安全性を担保することができます。 ミストCVD法は、成膜したい材料の前駆体を溶解させた溶液を利用し、その溶液を噴霧したミストを原料とする成膜手法です。 ミストの発生には超音波を利用しています。 このミストは耳鼻科などで利用されているネブライザや加湿器などで利用されており、スイッチ一つで発生が可能なため、非常に簡便に利用できます。 ミストCVD法では、ミストの粒径が非常に小さいので、そのミストは加熱によって容易に気化します。 その気化した原料はCVDプロセスを通して、基板上に目的の薄膜が成膜されることとなります。 また、このミストは温度の高い基板上ではライデンフロスト現象と呼ばれる状態が発生するため、ミストが基板に直接接触しません。 ライデンフロスト現象によりミストは、気体となって均一に成膜されます。 またミストCVD法は溶液にすることができれば、どのような原料も利用できるといった特徴があり、数多くの酸化物薄膜の成膜に成功しています。 ミストCVD法の装置として、3つの成膜装置を開発しています。 それぞれ成膜材料や用途に合わせて使い分けをしています。 また、この段差は0. これはミストが直接基板上に接触するのではなく、気体で反応し成膜されていることを示しています。 さらに、ミストCVD法の溶液にすることができればどのような材料も利用できるといった特徴を活かし、Gaの原料にAlやInの原料を一緒に混ぜることで混晶半導体の形成に成功しました。 混晶半導体は化合物半導体の基盤技術であり、これらの結果もまたパワーデバイス応用に向けた大きな進展。 ナノ構造形成技術 ミストCVD法は薄膜だけでなく、ナノ構造体の形成にも利用できます。 図のようにミストCVD法で導電性のITOナノ構造体の形成に成功しました。 また、新しいナノ構造体形成技術に関する研究も進めており、ミストCVD法で形成した薄膜とSEMを使って、ナノサイズの文字を書くことに成功しています。 【主な発表論文】• Nishinaka, D. Tahara, and M. Yoshimoto, Jpn. Appl. Phys. 56, 1202BC 2016. Free: (外部リンク)• Nishinaka, N. Miyauchi, D. Tahara, and M. Yoshimoto, CrystEngComm 20, 1882-1888 2018. Nishinaka, and M. Yoshimoto, Cryst. Growth Des. 18, 4022-4028 2018. 最新の注目研究の紹介はをご覧ください。

次の