耳 管 開放 症 難病 指定。 難病、「理解されていない」と感じるとき(2014年11月“チエノバ”)

遅発性内リンパ水腫(指定難病305)

耳 管 開放 症 難病 指定

片耳又は両耳の高度感音難聴が先行し、数年から数十年の後にめまい発作を反復するが、難聴は変動しない。 2.原因 原因は不明である。 先行した高度感音難聴の病変のため、長い年月を経て高度感音難聴耳の内耳に続発性内リンパ水腫が生じ、内リンパ水腫によりめまい発作が発症すると推定されている。 3.症状 先行する高度感音難聴には若年性一側聾が多いが、側頭骨骨折、ウイルス性内耳炎、突発性難聴による難聴のこともある。 数年から数十年の後に回転性めまい発作を反復する。 めまいの発作期には強い回転性めまいに嘔吐を伴い、安静臥床を要する。 めまいは、初期には軽度の平衡障害にまで回復するが、めまい発作を繰り返すと平衡障害が進行して重症化し、日常生活を障害する。 難聴は、陳旧性高度感音難聴のため不可逆性である。 めまい発作を繰り返すと不可逆性の高度平衡障害が残存する。 これが遅発性内リンパ水腫の後遺症期であり、患者のQOLを大きく障害する。 4.治療法 根治できる治療方法はない。 遅発性内リンパ水腫のめまい発作を予防するためには、利尿薬などの薬物治療が行われる。 発作の誘因となる患者の生活環境上の問題点を明らかにし、生活改善とストレス緩和策を行わせる。 保存的治療でめまい発作が抑制されない難治性の遅発性内リンパ水腫患者には、次第に侵襲性の高い治療:中耳加圧療法、内リンパ嚢開放術、ゲンタマイシン鼓室内注入術などの選択的前庭機能破壊術を行う。 5.予後 治療によってもめまい発作の反復を抑制できない難治性遅発性内リンパ水腫患者では、すでに障害されている蝸牛機能に加えて、前庭機能が次第に障害され重症化する。 後遺症期になると永続的な平衡障害と高度難聴が持続し、患者のQOLも高度に障害される。 後遺症期の高齢者は平衡障害のため転倒しやすく骨折により長期臥床から認知症に至るリスクが高まる。 さらに高度難聴によるコミュニケーション障害も認知症を増悪させる。 ) 3. 効果的な治療方法 未確立(対症療法のみで、根治できる治療法はない。 ) 4. 長期の療養 必要(進行性で、後遺症期になると永続的な高度平衡障害と高度難聴が持続する。 ) 5. 診断基準 あり(日本めまい平衡医学会作成の診断基準あり。 ) 6. 重症度分類 重症度分類3項目の全てが4点以上を対象とする。 日本めまい平衡医学会作成の診断基準 A.症状 1.片耳又は両耳が高度難聴ないし全聾。 2.難聴発症より数年~数十年経過した後に、発作性の回転性めまい(時に浮動性)を反復する。 めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度。 数秒~数十秒程度のきわめて短いめまいや頭位によって誘発されるめまいが主徴の場合は遅発性内リンパ水腫とは診断できない。 嘔気・嘔吐を伴うことが多い。 めまい発作の頻度は週数回の高頻度から年数回程度まで多様であるが、1日に複数回の場合は遅発性内リンパ水腫とは診断できない。 3.めまい発作に伴って聴覚症状が変動しない。 4.第VIII脳神経以外の神経症状がない。 B.検査所見 1.純音聴力検査において片耳又は両耳が高度感音難聴ないし全聾を認める。 2.平衡機能検査において難聴耳に半規管麻痺を認める。 3.平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性又は水平回旋混合性眼振や体平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める。 4.神経学的検査においてめまいに関連する第VIII脳神経以外の障害を認めない。 5.耳鼻咽喉科学的検査、純音聴力検査、平衡機能検査、神経学的検査、画像検査、生化学的検査などにより、遅発性内リンパ水腫と同様の難聴を伴うめまいを呈する中耳炎性内耳炎によるめまい、外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性めまい疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性めまい疾患など、原因既知のめまい疾患を除外する。 具体的には、耳鼻咽喉科学的検査で中耳炎を認め画像検査で中耳炎による内耳瘻孔を認める場合(中耳炎性内耳炎によるめまい)、中耳貯留液に外リンパ特異蛋白CTPが陽性の場合(外リンパ瘻)、生化学的検査で梅毒反応が陽性の場合(内耳梅毒)、画像検査で小脳橋角部の異常を認める場合(聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群)、画像検査で小脳・脳幹に異常を認める場合(中枢性めまい疾患)には遅発性内リンパ水腫とは診断できない。 C.鑑別診断 耳鼻咽喉科学的検査、純音聴力検査、平衡機能検査、神経学的検査、画像検査、生化学的検査などにより中耳炎性内耳炎によるめまい、外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性めまい疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性めまい疾患など原因既知のめまい疾患を除外した上で、めまいを伴う突発性難聴、メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎を鑑別する。 めまいを伴う突発性難聴は、高度難聴の発症とともにめまいが発症するが、めまい発作を反復しない点で遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 メニエール病はめまい発作に伴って聴覚症状が変動する点から遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 良性発作性頭位めまい症は頭位によって誘発される数秒~数十秒程度のきわめて短いめまいである点、めまいに伴って聴覚症状が変動しない点から遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 前庭神経炎はめまい発作を反復しない点、めまい発作に伴って聴覚症状が変動しない点から遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 <診断のカテゴリー> Definite:A.症状の4項目+B.検査所見の1~4を満たしC.鑑別すべき疾患を除外したもの。 Probable:A.症状の4項目+B.検査所見の1、4を満たすが2と3を満たさずC.鑑別すべき疾患を除外したもの。 <重症度分類> 重症度分類3項目の全てが4点以上を対象とする。 A:平衡障害・日常生活の障害 0点:正常 1点:日常活動が時に制限される(可逆性の平衡障害)。 2点:日常活動がしばしば制限される(不可逆性の軽度平衡障害)。 3点:日常活動が常に制限される(不可逆性の高度平衡障害)。 4点:日常活動が常に制限され、暗所での起立や歩行が困難(不可逆性の両側性高度平衡障害)。 注:不可逆性の両側性高度平衡障害とは、平衡機能検査で両側の半規管麻痺を認める場合。 B:聴覚障害 0点:正常 1点:可逆的(低音部に限局した難聴) 2点:不可逆的(高音部の不可逆性難聴) 3点:高度進行(中等度以上の不可逆性難聴) 4点:両側性高度進行(中等度以上の両側性不可逆性難聴) 注:中等度以上の両側性不可逆性難聴とは、純音聴力検査で平均聴力が両側40dB以上で40dB未満に改善しない場合。 C:病態の進行度 0点:生活指導のみで経過観察を行う。 1点:可逆性病変に対して保存的治療を必要とする。 2点:保存的治療によっても不可逆性病変が進行する。 3点:保存的治療に抵抗して不可逆性病変が高度に進行し、侵襲性のある治療を検討する。 4点:不可逆性病変が高度に進行して後遺症を認める。 2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。 3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。 本疾患の関連資料・リンク 日本めまい平衡医学会ホームページ「診療ガイドライン等」.

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耳管開放症(じかんかいほうしょう)とは

耳 管 開放 症 難病 指定

片耳又は両耳の高度感音難聴が先行し、数年から数十年の後にめまい発作を反復するが、難聴は変動しない。 2.原因 原因は不明である。 先行した高度感音難聴の病変のため、長い年月を経て高度感音難聴耳の内耳に続発性内リンパ水腫が生じ、内リンパ水腫によりめまい発作が発症すると推定されている。 3.症状 先行する高度感音難聴には若年性一側聾が多いが、側頭骨骨折、ウイルス性内耳炎、突発性難聴による難聴のこともある。 数年から数十年の後に回転性めまい発作を反復する。 めまいの発作期には強い回転性めまいに嘔吐を伴い、安静臥床を要する。 めまいは、初期には軽度の平衡障害にまで回復するが、めまい発作を繰り返すと平衡障害が進行して重症化し、日常生活を障害する。 難聴は、陳旧性高度感音難聴のため不可逆性である。 めまい発作を繰り返すと不可逆性の高度平衡障害が残存する。 これが遅発性内リンパ水腫の後遺症期であり、患者のQOLを大きく障害する。 4.治療法 根治できる治療方法はない。 遅発性内リンパ水腫のめまい発作を予防するためには、利尿薬などの薬物治療が行われる。 発作の誘因となる患者の生活環境上の問題点を明らかにし、生活改善とストレス緩和策を行わせる。 保存的治療でめまい発作が抑制されない難治性の遅発性内リンパ水腫患者には、次第に侵襲性の高い治療:中耳加圧療法、内リンパ嚢開放術、ゲンタマイシン鼓室内注入術などの選択的前庭機能破壊術を行う。 5.予後 治療によってもめまい発作の反復を抑制できない難治性遅発性内リンパ水腫患者では、すでに障害されている蝸牛機能に加えて、前庭機能が次第に障害され重症化する。 後遺症期になると永続的な平衡障害と高度難聴が持続し、患者のQOLも高度に障害される。 後遺症期の高齢者は平衡障害のため転倒しやすく骨折により長期臥床から認知症に至るリスクが高まる。 さらに高度難聴によるコミュニケーション障害も認知症を増悪させる。 ) 3. 効果的な治療方法 未確立(対症療法のみで、根治できる治療法はない。 ) 4. 長期の療養 必要(進行性で、後遺症期になると永続的な高度平衡障害と高度難聴が持続する。 ) 5. 診断基準 あり(日本めまい平衡医学会作成の診断基準あり。 ) 6. 重症度分類 重症度分類3項目の全てが4点以上を対象とする。 日本めまい平衡医学会作成の診断基準 A.症状 1.片耳又は両耳が高度難聴ないし全聾。 2.難聴発症より数年~数十年経過した後に、発作性の回転性めまい(時に浮動性)を反復する。 めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度。 数秒~数十秒程度のきわめて短いめまいや頭位によって誘発されるめまいが主徴の場合は遅発性内リンパ水腫とは診断できない。 嘔気・嘔吐を伴うことが多い。 めまい発作の頻度は週数回の高頻度から年数回程度まで多様であるが、1日に複数回の場合は遅発性内リンパ水腫とは診断できない。 3.めまい発作に伴って聴覚症状が変動しない。 4.第VIII脳神経以外の神経症状がない。 B.検査所見 1.純音聴力検査において片耳又は両耳が高度感音難聴ないし全聾を認める。 2.平衡機能検査において難聴耳に半規管麻痺を認める。 3.平衡機能検査においてめまい発作に関連して水平性又は水平回旋混合性眼振や体平衡障害などの内耳前庭障害の所見を認める。 4.神経学的検査においてめまいに関連する第VIII脳神経以外の障害を認めない。 5.耳鼻咽喉科学的検査、純音聴力検査、平衡機能検査、神経学的検査、画像検査、生化学的検査などにより、遅発性内リンパ水腫と同様の難聴を伴うめまいを呈する中耳炎性内耳炎によるめまい、外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性めまい疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性めまい疾患など、原因既知のめまい疾患を除外する。 具体的には、耳鼻咽喉科学的検査で中耳炎を認め画像検査で中耳炎による内耳瘻孔を認める場合(中耳炎性内耳炎によるめまい)、中耳貯留液に外リンパ特異蛋白CTPが陽性の場合(外リンパ瘻)、生化学的検査で梅毒反応が陽性の場合(内耳梅毒)、画像検査で小脳橋角部の異常を認める場合(聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群)、画像検査で小脳・脳幹に異常を認める場合(中枢性めまい疾患)には遅発性内リンパ水腫とは診断できない。 C.鑑別診断 耳鼻咽喉科学的検査、純音聴力検査、平衡機能検査、神経学的検査、画像検査、生化学的検査などにより中耳炎性内耳炎によるめまい、外リンパ瘻、内耳梅毒、聴神経腫瘍、神経血管圧迫症候群などの内耳・後迷路性めまい疾患、小脳、脳幹を中心とした中枢性めまい疾患など原因既知のめまい疾患を除外した上で、めまいを伴う突発性難聴、メニエール病、良性発作性頭位めまい症、前庭神経炎を鑑別する。 めまいを伴う突発性難聴は、高度難聴の発症とともにめまいが発症するが、めまい発作を反復しない点で遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 メニエール病はめまい発作に伴って聴覚症状が変動する点から遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 良性発作性頭位めまい症は頭位によって誘発される数秒~数十秒程度のきわめて短いめまいである点、めまいに伴って聴覚症状が変動しない点から遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 前庭神経炎はめまい発作を反復しない点、めまい発作に伴って聴覚症状が変動しない点から遅発性内リンパ水腫と鑑別される。 <診断のカテゴリー> Definite:A.症状の4項目+B.検査所見の1~4を満たしC.鑑別すべき疾患を除外したもの。 Probable:A.症状の4項目+B.検査所見の1、4を満たすが2と3を満たさずC.鑑別すべき疾患を除外したもの。 <重症度分類> 重症度分類3項目の全てが4点以上を対象とする。 A:平衡障害・日常生活の障害 0点:正常 1点:日常活動が時に制限される(可逆性の平衡障害)。 2点:日常活動がしばしば制限される(不可逆性の軽度平衡障害)。 3点:日常活動が常に制限される(不可逆性の高度平衡障害)。 4点:日常活動が常に制限され、暗所での起立や歩行が困難(不可逆性の両側性高度平衡障害)。 注:不可逆性の両側性高度平衡障害とは、平衡機能検査で両側の半規管麻痺を認める場合。 B:聴覚障害 0点:正常 1点:可逆的(低音部に限局した難聴) 2点:不可逆的(高音部の不可逆性難聴) 3点:高度進行(中等度以上の不可逆性難聴) 4点:両側性高度進行(中等度以上の両側性不可逆性難聴) 注:中等度以上の両側性不可逆性難聴とは、純音聴力検査で平均聴力が両側40dB以上で40dB未満に改善しない場合。 C:病態の進行度 0点:生活指導のみで経過観察を行う。 1点:可逆性病変に対して保存的治療を必要とする。 2点:保存的治療によっても不可逆性病変が進行する。 3点:保存的治療に抵抗して不可逆性病変が高度に進行し、侵襲性のある治療を検討する。 4点:不可逆性病変が高度に進行して後遺症を認める。 2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。 3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。 本疾患の関連資料・リンク 日本めまい平衡医学会ホームページ「診療ガイドライン等」.

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耳管開放症(じかんかいほうしょう)とは

耳 管 開放 症 難病 指定

耳管機能障害の診断と耳管開放症の病態(前篇) 守田耳鼻咽喉科 大阪駅前耳管クリニック 院長 守田 雅弘 風邪をひいたり、鼻が詰まったりしますとよく起こる病気として、一般的には耳管狭窄症といわれている疾患があります。 耳が詰まった感じや圧迫感などの耳閉感、自分の声が響いたりする自声強聴が耳管機能障害の一般的な症状ですが、耳管機能障害は、耳管狭窄症だけではなく、耳管開放症、耳管閉鎖不全症なども多いことが最近分かってきています。 当方の施設では、いずれの疾患も正確に診断し、診断結果に基づいて治療を行っています。 特に、耳管開放症は、日常生活にそれほど支障をきたさないごく軽症の方を含めると日本人の5%に見られるとも言われているうえに、症状が多彩で、耳鼻咽喉科に限った疾患でもありません。 そこで、今回は、耳管開放症を中心に述べたいと思います。 耳管開放症は、耳管機能の把握とともに、次の項目から総合的に診断が必要です。 耳管開放症の診断の手がかり• 問診を通じて自覚症状を聞き、重症度を判定する• 体重減少の既往はないか、また、精神・身体的ストレスの有無を問診で確認する• 低血圧、自律神経失調症、うつまたはうつ状態などの身体機能障害を把握する• 鼓膜の呼吸性動揺観察や耳管機能検査を実施して客観的に重症度を判定する• 画像検査(CT)を実施して耳管の構造的な異常がないか把握する 1. 耳管開放症を理解するうえで重要な解剖と機能 耳管は成人では約35mmから40mmの長さで、耳管咽頭口より約3分の2の軟骨部耳管と鼓室側約3分の1の骨部耳管との境目付近に峡部という最も内腔が狭い部分があります。 通常は閉じている耳管は、この峡部や軟骨部耳管の外側に付着する口蓋帆張筋が嚥下時などに収縮し、その結果、峡部を含めて耳管が開大することを耳管内の超微細内視鏡検査で筆者は確認しています。 耳管長軸方向に沿った軟骨部耳管の横断面では、耳管腔の内側に耳管軟骨内側板が位置し、口蓋帆張筋とオストマン脂肪体がその外側に位置します。 耳管には大別して、a)換気、b)排泄、c)防御の3つの作用があります。 現在、耳管機能検査法として用いられているものは、a)の換気能で、臨床上、耳管開放症の病態を理解するうえで最も重要な機能といえます。 換気能とは、外圧の急激な変化に対して中耳圧を調節する機能のことで、嚥下や開口(あくび)などで、下顎神経(三叉神経の第3枝)の支配の口蓋帆張筋が収縮し、耳管が開いて換気が行われ、また、いわゆるバルサルバ(valsalva)通気のように鼻咽腔あるいは外界の圧変化による圧勾配でも耳管は開大します。 幼小児では、特に嚥下時など耳管軟骨の支持的働きが不十分ために、嚥下などによる耳管の開大能が障害されやすく、感染防御のための耳管を閉鎖する機能が弱く、強い鼻かみや鼻すすりで容易に鼻咽頭の感染源が経耳管的に中耳へ侵入することができ、急性中耳炎や滲出性中耳炎の原因となります。 図1.耳管の位置と横断面 内腔(安静時):峡部では0. 4~0. 耳管開放症の病態と発症に関与する因子 耳管開放症における自声強聴、耳閉感などの耳症状は耳管狭窄症と同様ですが、呼吸音聴取は特異性が高く、また、めまい、肩こり、うつ状態など全身症状がより強いのが特徴です。 表2.耳管開放症の主な症状 心身症的な側面が強い場合あり。 1)耳症状:耳閉感、自声強聴、呼吸音聴取、耳鳴、難聴 2)めまい 3)声の異常(開鼻声) 4)肩こり 5)頭痛、眼の違和感6)うつ、うつ状態 など 耳管開放症では、ダイエットなどによる急激な体重減少で、耳管周囲の支持組織(特に脂肪組織)の減少が誘因となり易く、食生活の欧米化や運動不足により血液粘度の増加や血管壁硬化などにより耳管周囲の血液循環障害も一因になりえると考えられます。 その結果、通常安静時には耳管周囲の脂肪組織や血液のうっ血などによる圧迫にて閉じている耳管内腔が、常に開放あるいはそれに近い状態になるため自分の声が響いたり耳閉感を生じるようになりますし、症状がひどい時は、呼吸音がザーザーと聞こえたり、めまい症状や肩こりが強くなったりします。 本症は、30歳代からの40歳代の女性に特に多く、男性では20歳から30歳代と高齢者に多いのが特徴です。 女性においては、妊娠、経口ピルが影響し、低血圧や自律神経失調症を伴うことが多いのも特徴です。 男性では肝硬変、心臓疾患、腎臓疾患などの慢性消耗性疾患の合併や胃・大腸など消化管や心臓手術後体重減少の合併を高年発症の半数以上に認めます。 いずれの場合でも、症状発現の数年前から発現時までに短期間の急激な体重減少を経験していることが多く、体重が減少後増加し元に戻っても、主に腹部に脂肪が着くだけで耳管周囲の脂肪組織はそれほど増えないため、耳管開放症の発症は、BMIが正常でも体重減少既往がある方で明らかに多くみられます。 耳管開放症とその類縁疾患 通常タイプの耳管開放症は、つねに耳管が開いた状態であり、特に重症例では鼓膜の可動性が大きく診断は比較的容易です。 その一方で、鼻をすすって自分で調整している耳管開放症、いわゆる鼻すすり型の耳管開放症があります。 この病態では、耳管が歩行などで開放を生じてくると、多くは無意識のうちに鼻すすりを何回も行って鼓室内に陰圧をかけてできるだけ鼓膜を凹ませることで耳管の通りをロックし閉鎖する操作を行っています。 鼓膜の陥凹があるので耳管狭窄症との類縁の所見を呈しますが、根本的に耳管開放を起こさないために陥凹させている点で異なります。 この病態は、どちらかというと20代、30代の痩せぎみのひとに多く、女性にやや多いのが特徴です。 高齢者に見られにくいのは、年月が経つと鼓膜の一部が鼓室内へ入り込むか癒着し、根本的な手術が必要な真珠腫性中耳炎などになってしまっているケースが少なからずあることが推察されます。 耳管開放症の診断 耳管開放症は、診断基準が日本耳科学会で作成されています。 耳症状としては、自声強聴、耳閉感、呼吸音聴取の3つのうちの1つ以上があり、鼓膜の呼吸性動揺や、頭部前屈や臥位などへの体位変換による耳症状改善などがあることが必要になります。 さらに耳管機能検査により、より精密な診断が可能ですので、当施設でも施行しています。 耳管機能検査法には、1)音響法、2)TTAG(耳管鼓室気流動態法:インピーダンス法と圧測定法)、そして3)加圧減圧法の3つが主なものになります。 より重要な診断法としては、CTによる画像診断が、特に重症の耳管開放症に対しては有用ですので、当施設でもより重症の耳管開放症の診断目的や真珠腫性中耳炎随伴の有無の精査目的などで検査を施行しています。 耳管開放症患者の病因の一つに体重減少の既往の存在があげられますが、全てがそうではなく、一番多いのは、ストレスが過剰に働いて誘因となっていることです。 また低血圧や、更年期の女性にも多いこと、自律神経失調症様の所見を呈する例が多いことなどより、これらの主に機能的な因子が関与しているものと思われます。 患者さんに対する生活指導として、ストレスや体重減少の回避、水分のまめな摂取、血流を良くする運動や生活を具体的に指導することで、程度の軽い方は改善する場合があります。 詳細な生活指導法とそれ以外の投薬、処置、手術治療については後編で述べさせていただきます。 [勤務医ニュースNo. 126:2015年7月15日号に掲載].

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